由来
諸説あるが、以下などが有力とされている。
- 1910年代 に ニューヨーク のニッカボッカー・ホテル( en )にいたマルティーニという名の バーテンダー が考案したことから(しかし現在のものとはレシピが異なる)
- マティーニの原型となったカクテルで使用されていた ベルモット が、 イタリア の マルティーニ・エ・ロッシ 社製であったことから。
標準的なレシピ
- ドライ・ジン - 45 ml
- ドライ・ベルモット - 15ml
あくまでも上記は参考。今日ではジン3~4に対してベルモット1が標準的とされ、これよりジンが多い場合はドライ・マティーニと呼ばれることが多い。ジンとベルモットの割合は好みや作る者によって様々である。元々はジン1に対してベルモット2程度の割合(アルコール度数にして約20度)であったが、その後に辛口(ドライ)なものが流行し、一時期はベルモット1滴の中にジンを注ぎ込むといったエクストラ・ドライ・マティーニも供されることがあったという。
作り方
- 上記材料を ミキシング・グラス に入れて ステア する。
- カクテル・グラス に注ぎ、 オリーブ を飾る。
備考
好みで上記材料に オレンジ・ビターズ 数滴を加えたり、供する前に レモン の 果皮 を絞り加えることもある。
バリエーション
- ウォッカ・マティーニ (ウォッカティーニ) ジンの代わりに ウォッカ を用いたもの。
- ダーティ・マティーニ オリーブジュースが入るもの。
- 焼酎マティーニ(酎ティーニ) ジンの代わりに 焼酎 を用いたもの。
- スウィート・マティーニ ドライ・ベルモットの代わりにスウィート・ベルモットを用いたもの。
- サケ・マティーニ(サケティーニ) ドライ・ベルモットまたはジンのどちらかを 日本酒 に置き換えたもの。
- ギブソン オリーブ の代わりにパール・オニオンをデコレーションに用いたもの。
などがあり、上記以外にも実に多岐にわたるヴァリエーションが存在する。1979年に出版された『ザ・パーフェクト・マティーニ・ブック』では268種類のレシピが紹介されているといわれる。
話題
- イギリス の 首相 を務めた ウィンストン・チャーチル もマティーニ、特に辛口のエクストラ・ドライ・マティーニを好んだと言われる。ベルモットを口に含んだ執事に息を吐き掛けさせ(執事にベルモットと言わせたとの説も)、「ベルモットの香りがするジン」を好んだという話や、ベルモットの瓶を横目で眺めながら(正視すると「甘すぎる」らしい)(ベルモットが当時戦争相手だったイタリア生まれの酒だから、という説もある)ジンを飲んだという逸話が伝えられている。
- 007シリーズで ジェームズ・ボンド が「 Vodka Martini. Shaken, not stirred.( ウォッカ マティーニを。ステアせずにシェィクで)」という台詞を決めるシーンがある。本来、ジンでつくるマティーニをウォッカで、おまけにシェイクして出せという意表を突いた台詞が受け流行となり、これは007シリーズの定番になった。また、小説『 カジノ・ロワイヤル 』では ボンド が、 ゴードン・ジン 3、ウォッカ 1、キナ・リレ 1/2を、よくシェークしてシャンパン・グラスに注ぎ、 レモンの皮 を入れるというオーダーをする。このオーダーは2006年に同名の映画が公開されることにより有名になり、 ボンドガール の名前を採り ヴェスパー あるいはヴェスパー・マティーニと呼ばれる定番になったが、このレシピが有名になったために、大量生産されていなかったフランス製のヴェルモット「キナ・リレ」(Kina Lillet、現名: リレ・ブラン)はさらに貴重になり、このカクテル自体が希少品となった。
- 第二次世界大戦 を舞台にした アーネスト・ヘミングウェイ の小説『 河を渡って木立の中へ 』の中で、主人公がバーテンダーにマティーニを注文する際「 モンゴメリー 将軍で」と頼む。これは15:1のハードなドライ・マティーニの事で、アフリカ戦線の連合軍総司令官モンゴメリー将軍が、ドイツ軍との戦力比が15対1以上にならないと決して攻撃を開始しなかった事に引っ掛けている。
- 欧米での綴りはいずれも Martini である。これを英語風に発音すると(マーを強く)「マーティニ」となるが、英語圏でもイタリア風に「マルティーニ」、あるいは折衷的な「マーティーニ」などと発音されているようである。日本ではマティーニと表記される。
- クラーク・ゲーブル は、ベルモットのボトルを逆さにして振り、そのベルモットが沁みたコルクでグラスをさっと拭き、あとは冷えたジンをグラスに満たして飲んでいたという。
- 1991年 のテレビドラマ『 101回目のプロポーズ 』では、主人公・矢吹薫( 浅野温子 )が バー でいつも注文して飲んでいた。
出典
- ^ YYT Project 編 『おうちでカクテル』 p.50 池田書店 2007年2月20日発行 ISBN 978-4-262-12918-1
- ^ サントリー の宣伝部に在籍していたため事情に明るかった 開高健 はその著作で、「マルティーニ・エ・ロッシ社が、自社の ベルモット を拡販するために、このカクテルに“マティーニ”と名づけて意図的に流行させた」という説が有力であると述べている。
関連文献
- 旭屋出版編集部『The Best of MARTINI Book 名バーテンダー・人気バーテンダー 珠玉のマティーニレシピ』旭屋出版、2004年5月、 ISBN 4751104403
- 稲保幸『スタンダード・カクテル・ブック927 付録マティーニ・カクテル徹底研究821』しゅるい研究社、2004年7月、 ISBN 443404625X
- 枝川公一著『日本マティーニ伝説 トップ・バーテンダー今井清の技』(『小学館文庫』)、小学館、2001年2月、 ISBN 4094051716
- ギャップ出版編集部編『タンカレー・マティーニAtoZ』ギャップ出版、2001年6月、 ISBN 4901594257, ISBN 4883571270
- 朽木ゆり子著『マティーニを探偵する』(『集英社新書』)、集英社、2002年7月、 ISBN 4087201503
- 渡辺一也『カクテル1000&マティーニ100』ナツメ社、2005年10月、 ISBN 4816340157
- 澤井慶明監修 永田奈奈恵カクテル指導『バータイムをたのしくするカクテルの事典』(『成美堂出版』)、1996年2月、 ISBN 441508348X