.30-06 スプリングフィールド | ||||||||||||||||||||||||
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![]() ソフトチップ弾頭を装備した.30-06スプリングフィールド弾薬 | ||||||||||||||||||||||||
種類 | 小銃 | |||||||||||||||||||||||
原開発国 |
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使用史 | ||||||||||||||||||||||||
使用期間 | 1906年から現代 | |||||||||||||||||||||||
使用者・地域 | アメリカ合衆国、その他各国 | |||||||||||||||||||||||
使用戦争 | 第一次世界大戦、第二次世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争、その他 | |||||||||||||||||||||||
製造の歴史 | ||||||||||||||||||||||||
設計者 | アメリカ合衆国軍 | |||||||||||||||||||||||
設計時期 | 1906年 | |||||||||||||||||||||||
生産期間 | 1906年から現代 | |||||||||||||||||||||||
特徴 | ||||||||||||||||||||||||
元モデル | .30-03スプリングフィールド弾 | |||||||||||||||||||||||
薬莢形状 | 無起縁式、ボトルネック形状 | |||||||||||||||||||||||
弾丸径 | .308 in (7.8 mm) | |||||||||||||||||||||||
首径 | .340 in (8.6 mm) | |||||||||||||||||||||||
肩径 | .441 in (11.2 mm) | |||||||||||||||||||||||
底面径 | .471 in (12.0 mm) | |||||||||||||||||||||||
リム径 | .473 in (12.0 mm) | |||||||||||||||||||||||
リム厚 | .049 in (1.2 mm) | |||||||||||||||||||||||
薬莢長 | 2.494 in (63.3 mm) | |||||||||||||||||||||||
全長 | 3.34 in (85 mm) | |||||||||||||||||||||||
薬莢容量 | 68 gr H2O (4.4 cm3) | |||||||||||||||||||||||
ライフリング | 1-10 in. | |||||||||||||||||||||||
雷管のタイプ | 大口径小銃用 | |||||||||||||||||||||||
最大圧 | 60,200 psi | |||||||||||||||||||||||
弾丸性能 | ||||||||||||||||||||||||
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算出時の銃砲身の長さ: 24インチ長(60.96cm) 出典: Federal Cartridge / Accurate Powder |
.30-06スプリングフィールド弾(30-06スプリングフィールドだん)とは、1906年にアメリカ陸軍が開発し、規格化が行われた弾薬で、1960年代から1970年代初期まで使用された。他の名称には7.62x63mm、ウィンチェスター社では「30 Gov't 06」ともされている。読み方は「thirty-aught-six」もしくは「thirty-oh-six」である。.30とは弾丸の直径を表したもので、また06とは採用年である1906年を示したものである。
本弾薬は.30-03弾 、 6mmリー・ネイビー弾 、.30-40クラグ弾を代替した。.30-06弾はアメリカ陸軍の主力小銃および機関銃の弾薬用として50年近く用いられ、7.62x51mm NATO弾(民間用商品名は.308ウィンチェスター)および5.56x45mm NATO弾に代替された。この両方の弾薬は現在、アメリカ軍とNATOの任務に使用されている。.30-06スプリングフィールド弾は競技用実包として非常に人気があり、全ての主要メーカーがこの弾薬を製造している。
ヨーロッパの軍隊の多くは20世紀を迎える頃に、新しい弾薬を採用する過程にあった。これは弾頭部分が尖鋭に加工された、 スピッツァー 弾頭を使用するものだった。フランスでは1898年、ドイツでは1905年、ロシアでは1908年、そしてイギリスでは1910年に弾種変更が行われていた。しかし1903年の時点でアメリカ軍の装備した.30-03弾は、弾丸重量14g、蛋形、銃口初速700m/sというものに過ぎず、進行する技術革新にすみやかに落伍した。
こうした理由により、弾頭がスピッツァー形状、弾底がフラットベースで弾丸重量9.7g、射出のために薬莢ネック部分がわずかに短くされた新型弾薬筒が開発された。この弾薬の 弾道係数 (G1 BC)は約0.405であり、銃口初速820m/s、初活力は3,292ジュールを達成した。スプリングフィールドM1903小銃は初期の.30-03弾薬とともに使用されていたが、これらは.30-06スプリングフィールド弾に適合するよう速やかに改修され、アメリカ陸軍により「M1906」と呼称された。小銃の改修作業にはブリーチ部分での銃身の短縮化と、薬室の再切削が含まれた。このような改修により、新しい弾丸の縮小された オジーブ (窮窿部分)が、ライフリングへ到達するまで長い距離を推進する必要がなくなった。他の改修は「ロッド銃剣」を撤廃したことなどである。初期のスプリングフィールド銃のこの装備品はトラブルが多いものだった。
第一次世界大戦で集積された戦訓は、最大有効射程の点でアメリカの機関銃より他国のそれが遙かに勝ることを示していた。加えて、軽迫撃砲と大砲の大規模投入よりもまず、アメリカ歩兵連隊の戦術では長射程の機関銃による弾幕射撃や間接射撃が重要と考えられた。こうした理由から、1926年、アメリカ軍の武器科では新型の 改良型軍用小銃 推進薬を充填した.30 M1普通弾のカートリッジを開発した。これは弾丸重量11.3g、弾尾が9度のボートテール形状を持ち、弾道係数(G1 BC)は約0.560、銃口初速が800m/s、初活力は3,650ジュールを達成した。さらにこの弾丸は飛行中の空気抵抗を減らした結果、射程にともなう急激な減速や横風による横弾の発生を減らし、また機関銃と小銃の両方の使用において、最大有効射程と超音速で飛翔する領域をかなり増大させた。最大射程は約5,030mに達した。これに加え、真鍮製の被甲が開発された。これは初期のM1906弾薬が悩まされた、銃身内の金属の汚れをほぼ除去するものだった。
アメリカ軍の戦時の余剰な弾薬は総計20億発となり、陸軍の規定では最古の弾薬を最初に訓練で消費するよう求めた。結果、旧来の.30-06弾薬も訓練に消費された。この古いM1906弾薬がすべて撃ち尽くされるまで、.30 M1普通弾の在庫はゆっくりと増大した。1936年、.30 M1普通弾の最大射程が多くの範囲で安全制限を超えていることが判明した。一通の緊急指示が出され、可能な限り速やかに、初期のM1906弾薬と 腔外弾道 を適合させた大量の弾薬を製造するよう命令がなされた。1938年開発の新しい弾薬は基本的に古いM1906弾の複製だったが、IMR 4895推進薬を充填し、また新規に弾尾がフラットベースとなった。さらに真鍮製の被甲を持ち、異なる成分の鉛合金によって弾丸重量が従来の9.7gから9.8gへと変化した。この1938年式の弾薬である.30 M2普通弾は、初速855m/s、初活力3,600ジュールを達成し、最大射程は約3,150mだった。
軍事用途では、30-06弾はボルトアクション方式のスプリングフィールドM1903小銃、M1917エンフィールド小銃、半自動式のM1ガーランド小銃、M1941ジョンソン小銃、Famage マウザー、ブローニングM1918自動小銃(BAR)、およびM1917とM1919シリーズを含む多数の機関銃に使用された。これは第一次・第二次の両世界大戦に投入されたほか、朝鮮戦争でもアメリカ合衆国に貢献した。また最後の大規模な使用はベトナム戦争だった。相当量の余剰な薬莢がリロード用に大量使用されるだけでなく、何十種類にもおよぶ商業用弾薬やワイルドキャット・カートリッジの基礎を作り出した。1908年、レバーアクション方式のウィンチェスター モデル1895小銃は.30-06弾薬を採用し、商業用に量産された最初の競技用小銃になった。現在でも本弾薬は狩猟用として非常に普遍的な銃弾で、近距離から中距離にいるバイソンやサンバー、熊など大型の標的への使用に適している。
弾道学的に、従来設計された弾薬の中でも.30-06弾は最も用途が広いものの1種である。強力なハンドロード弾薬と小銃は上記の標的を処理でき、また.30-06弾は多くの「マグナム」弾に対抗する性能を持つ。この弾薬は、装填できる 銃器 が余剰となっていて手に入りやすいこと、商業的な弾薬の需要、そして威力の点から、北アメリカの狩猟用として最も人気のある弾のひとつという地位を維持している。北アメリカで見つかるどのような獲物、小型であっても大型で重量があるものでも、適切なハンドロードによってこの弾薬は対応できる。
.30-06弾薬は射程900mの射撃を予期して設計されている。1906年、原型のM1906 .30-06弾薬は弾丸重量9.7g、平底で白銅の被甲を施した弾丸を装着していた。第一次世界大戦後のアメリカ軍は、長距離射撃能力を持つもっと良い機関銃を必要とした。そこでヨーロッパから報告された兵器性能に基づき、流線形で弾尾がボートテール形状、重量11.2gで真鍮を使用した弾丸が用いられた。.30-06弾薬は11.2gの弾丸を装着し、「カートリッジ、.30、M1普通弾」と呼ばれた。.30-06弾は、日本が採用した小型の三十年式実包よりはるかに強力であり、後継の九九式普通実包に相当した。新型のM1弾薬は、M1906弾よりも相当に弾道が正確なことが判明した 。
1938年、平底型の弾丸が.30-06薬莢と組み合わされ、M2普通弾となった。これは銃身を汚さないタイプで弾丸重量は9.8gだった。M2普通弾の仕様書では、銃口初速840m/sという最小限の速度を義務づけており、これは銃口から24mの距離で測定された。M2普通弾は軍用小銃と機関銃向けに制式採用されていた弾薬で、これはスプリングフィールドM14小銃およびM60機関銃が使用する7.62x51mm NATO弾に代替された。小銃で使用するにあたり、M2普通弾は初期のM1弾薬よりも弾道が不正確なことが判明した。弾丸重量9.7gのM2普通弾に適合する小銃でさえ、射程180mで直径130mmという目標への集弾率が最善と思われ、そしてもっと多数の小銃ではより低い精度しか発揮できなかった。アメリカ海兵隊では狙撃手と訓練された射手のためにM1弾薬のストックをとっておいたが、この処置は第二次世界大戦の初期に行われたソロモン諸島の戦いを通じて行われた。一部の狙撃手による精度を向上させる努力は、もっと重量のある.30-06 M2徹甲弾薬の使用にむけられたが、これは朝鮮戦争の際にも再び実行された。ほかの兵員はデンバー武器科が製造した大量のM2弾薬を探しており、この弾薬は長距離狙撃の際に他の戦時弾薬工場で量産された弾薬よりも正確であることが確認された。商業向けに製造され、.30-06弾薬を装填する小銃は狩猟用として人気がある。
現在のメーカー製.30-06弾薬は、7.1gから14.3gまで様々に異なる弾丸重量を持つ実体弾であり、サボ付きの減口径弾を使用すれば重量は3.6gに低下する。推進薬は初速と圧力を減らすよう量を加減して詰めることができ、また同様に、強力な銃器用に初速と圧力を強化することもできる。.30-06弾薬は世界で最も人気のある競技用弾薬の一種である。多くの狩猟用弾薬は3,000ft-lbs以上の初活力を持ち、運動エネルギーを急激に目標へ移し替えられるエクスパンディング弾丸を用いる。
弾丸重量 | その他商業用製品 | ホジドン社製 | シュペーア社製 | ホーナディ社製 | ノスラー社製 | バーンズ社製 |
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7.13g(110グレイン) | N/A | 1068.3m/s (3505f/s) | 1022.9m/s (3356f/s) | 1066.8m/s (3500f/s) | N/A | 1057.9m/s (3471f/s) |
8.10g/8.42g(125/130グレイン) | 957.1m/s (3140f/s) | 1016.2m/s (3334f/s) | 953.7m/s (3129f/s) | 975.4m/s (3200f/s) | 993.1m/s (3258f/s) | 999.1m/s (3278f/s) |
9.72g(150グレイン) | 887.0m/s (2910f/s) | 935.1m/s (3068f/s) | 867.8m/s (2847f/s) | 944.9m/s (3100f/s) | 914.4m/s (3000f/s) | 923.9m/s (3031f/s) |
10.69g(165グレイン) | 853.5m/s (2800f/s) | 895.5m/s (2938f/s) | 854.4m/s (2803f/s) | 919.0m/s (3015f/s) | 915.0m/s (3002f/s) | 908.3m/s (2980f/s) |
11.66g(180グレイン) | 823.0m/s (2700f/s) | 852.8m/s (2798f/s) | 840.0m/s (2756f/s) | 883.9m/s (2900f/s) | 848.0m/s (2782f/s) | 853.1m/s (2799f/s) |
12.96g(200グレイン) | N/A | 786.1m/s (2579f/s) | 778.5m/s (2554f/s) | N/A | 819.3m/s (2688f/s) | 816.9m/s (2680f/s) |
14.25g(220グレイン) | 731.5m/s (2400f/s) | 754.7m/s (2476f/s) | N/A | 762.0m/s (2500f/s) | 793.1m/s (2602f/s) | 736.1m/s (2415f/s) |
上記の表は、一般的な弾丸重量という条件下において、商業用.30-06弾薬に詰められた推進薬で達成できる典型的な銃口初速と、幾種類かのリローディングマニュアルによって報告された最大の銃口初速を一緒に示したものである。ホジドン社、ノスラー社およびバーンズ社は、24インチ長の銃身を想定した速度を報告している。ホーナディ社とシュペーア社では22インチ銃身のための速度を報告している。このデータはすべて、10インチで1回転という施条転度を持つ銃身用のもので、これは最も重量のある弾丸を安定させるために必要とされる。最高の銃口初速はノスラー社が弾丸重量10.69gで報告しており、重量のある弾丸は推進薬に緩燃性の ダブルベースパウダー (アライアント・リローダー22)を使用する。
より新しい7.62x51mm NATO弾/.308ウィンチェスター弾薬は、標準的な軍用.30-06弾と同様の性能を、より小型の薬莢に詰めた推進薬で実現した。しかし.30-06弾薬はもっと大きな薬莢容積を持っており、もし射手が望めば、もっと強い力を生み出す薬量を詰めることができる。
.30-06弾薬が、長年にわたりとても根強い人気を保ち続けた弾薬である1つの理由は、この弾薬筒の威力の上限が、大部分の射手にとり受け入れられるものだったことである。射撃時にトリガーのみを引き、ほかは後方に支持物を置かず後退するに任せる依託射撃、いわゆるフリー・リコイル状態において反動のエネルギーが27.1ジュールよりも大きい時、大部分の射手は強い衝撃で萎縮する。また、3.63kg重の小銃から.30-06弾を撃つ際、10.69gの弾丸を883.9m/sで撃ち出すと反動のエネルギーは27.3ジュールとなる。反動を嫌う射手はもっと軽量な銃弾を選ぶことができる。上記と同じ3.63kg重の小銃により、9.72gの弾丸を887.0m/sで撃ち出すとき、反動のエネルギーは23.9ジュールが生み出されるに過ぎない。若年の射手は、7.13g、8.10gまたは8.42gのようなもっと軽量の弾丸で射撃を始めることができる。
.30-06スプリングフィールド弾は水に換算して4.43mlの薬莢容積を持つ。弾薬の外形は、非常に過酷な条件下でも、ボルトアクション方式の小銃および機関銃が両方とも給弾と排莢を円滑に行えるよう設計されている。
C.I.Pによる.30-06スプリングフィールド弾のカートリッジ寸法。すべてのサイズはmm表記である。
アメリカでは薬莢のショルダー部の角度をalpha/2、17.5度と規定した。「加盟国内で流通する武器弾薬の安全保証を行う国際機関」(C.I.P.)によれば、通常この弾薬に用いる 施条 転度は254mm、施条数が4条、ライフリング頂部腔径7.62mm、ライフリング深部腔径7.82mmである。施条幅は4.49mm。使用される雷管は大型小銃用のものが使われる。公式ガイドラインに従えば、.30-06弾薬の薬莢は405MPa(58,740 psi)までの圧力を処理することができる。C.I.P.の基準に従う国家では、全てのライフル用弾薬の薬莢と弾頭の組み合わせを顧客に販売するにあたり、このC.I.P.圧力で最大125%に耐えることを証明しなければならない。 8x64mm S弾 は、おそらく.30-06弾薬と弾道が最も近しく、対をなすヨーロッパの弾薬である。
「注」.30-06弾薬は、多種のそれぞれ異なる弾丸が異なる仕様で商業用に量産されている。